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東京高等裁判所 昭和34年(く)118号 決定

少年 B(昭一五・六・二二生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の趣意は、(一)、本件は互に合意のうえでなされた和姦であつて、強姦ではなく、なお少年が被害者K子を殴つたのは、同女から「旅館代も持つていないとは、男のくせにだらしがない。」と罵られたのを憤慨したためであつて、強姦する目的で殴つたのではなく、且つ同女を棒で殴つたことはなく、結局、原決定には、重大な事実の誤認があり、(二)、被害者K子には告訴の意思がなかつたのに、同女の親達がそのことを知らずに告訴したが、後にそのことが判つて示談が成立したから、原決定の処分は著しく不当であるというのである。

よつて、記録を精査するに、(一)については、原決定が認定した事実は、一件記録に現われた証拠によつて、すべて、十分に、これを肯認することができ、記録を精査し、且つ当審における事実取調の結果を検討しても、原決定の事実認定に重大な事実の誤認があるとは考えられないし、(二)については、一件記録及び当審の事実取調の結果に現われた少年の年令、性行、経歴、生活環境、本件犯行の罪質、態様、動機等を総合考察すれば、少年を特別少年院に送致した原決定は、相当であつて、著しく不当な処分とは考えられない。

よつて、本件抗告は理由がないから、少年法第三三条第一項、少年審判規則第五〇条により、これを棄却することとして、主文のように決定をする。

(裁判長判事 中西要一 判事 久永正勝 判事 河本文夫)

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